楽器と音楽
当たり前のことを書くが、両方好きなこと、愛していることが一番大切なことだ。片方から入っていっても最終的には必ず両方かなり深い見識と知識が必要になる。楽器の場合は技術も含めてだが。
そんなこと当たり前だろう………と言われるのだが、なかなか両方をそれなりに深めていくのは難しい……。
自分は音楽から入っていった。しかも歌謡曲からだ。小学生の頃、米米CLUBやドリカム、サザンオールスターズ、ユニコーン………書ききれないが、当時800円のシングルCDを小遣いを貯めて買ったもんだ。カラオケなんかもよく行ったし………。その頃サックスはやっていたが、ブラバンで配られる曲を吹いていた程度だ。楽しかった思い出はあるが、ちゃんと楽譜通りに吹いていたのかな……とかよく思い出せない。
中学……高校……と思春期を迎えて、ジャズに出会った。親父がジャズ喫茶をやっていたことから、なんとなく耳にはしていたが、テーマの簡単な部分だけCDと一緒にコピーして吹いたり、演奏者をおぼえたり、意識して聞き始めたのはこの頃だ。
こんなふうに毎日演奏して暮らせたらいいな……なーんて思ったこともあったが、進学校だったので勉強…小テスト…勉強…本テスト、日々が勉強で忙しくて、勉強することが当然で、そんな思いはすぐ消えてしまった。
幸か不幸か、学費を補助してくれる人が出てきて、音大に進む道を選ぶことになった。高校2年の夏休み前だった。小さい頃から音楽家を志していたわけでもないし、英才教育を受けているわけでもないので、レッスンと楽器の練習がとても大変だった。そう………♭3つ付くE♭のスケールで躓いているレベルだったので……………。
楽器の練習ばかりで、音楽を聞く暇が無くなった。一緒に学んでいた周りの音大受験生たちも音楽をじっくり聞いている様子もなくエチュードを必死にさらっていた。当時は自分もクラシックの音大受験のエチュードやスケールばかりやっていた。ジャズをやるほどの楽器の基礎ができていなかったのである。
そんな自分だが数年かかって、サックスに関してはきちんとクラシックの基礎的運指、アンブシュア、一通りのエチュード、ある程度クリアできた。人より劣る部分が多かったので、人の3倍は練習したと思う。24時間楽器と一緒にいたお陰で、楽器はとても好きになった。
しかし…………やっと基礎が終わってジャズ、ポピュラー音楽に取り組んだところ、全く吹けないのだ。かっこよく……レコードのように……笑笑
チャーリーパーカーのオムニブックの楽譜をきれいにそのまま吹いても全くだめだった。例え音階を1つも間違わなかったとしても…………。
そう、音楽を聞くことが欠落していたのである。だからフレーズにジャズの匂いやニュアンス、いやらしい表情がでないのだ。そうゆうこともうすうすわかっていて、音楽は聞きたかったのが、楽器の練習課題が、自分にとってハードすぎて本当に時間がなかったのである。
ジャズに限らないことだが、音楽は聞かなければ、絶対によくならない。たくさん練習してたくさん聞いて………一枚のレコードのすべての音、フレーズ、細かいニュアンスまで吸収するくらいじっくり研究することが必要である。日々の基礎練習と並行して…………。サッチモから現代のニューヨークジャズまで、進行し続ける音楽をすべて自分なりに吸収して、技術がそれに伴うまでは、10年単位の年数が必要なのである。楽器の技術レベルが高くてテクニックでごまかしても、音楽を聞いて消化できているかどうかは、耳のいい人にはすぐバレてしまう。
もしと音楽も楽器も同じくらい熟知しているころには、両方をきっと愛しているだろう。